操り人形

あるところに、年老いた人形遣いと少年が一緒に住んでいた。
ある日、老人の使い古した人形が意思を持った。
人形はその日から自分の意思で動き回り、おしゃべりするようになった。
だが老人はこれを嫌い、今まで通りのただの操り人形でいることを望んだ。
少年は友達が増えて嬉しかったが、老人の言葉は彼にとって絶対で、生きた人形をただの操り人形として扱うことに彼も従った。
人形はただの操り人形に戻った。

少年が青年になるころ、老人は死んだ。

青年は生きた人形に、君はもう自由で、体の糸を切り、自分の足で立っていい、と言った。
人形は言われた通り、体の糸を切り、自らの足で立った。
青年は違和感を覚えた。
自分勝手に動いたりしないし、おしゃべりもいっさいしない。
ただこちらをじっと見ている。
まるで命令を待つかのように。

生きた人形は心を失っていた。